SEの収入とは、何で決まってくるものなのでしょうか? 豊富な経験? 実用的なスキル? それらは収入を決める一因ではありますが、すべてではありません。経験とスキルを持っているSEでも、低い収入に甘んじてしまっているSEは意外と多いものです。どうして、そのような収入と経験・スキルとの乖離が生まれてくるのでしょうか?
私の知る、とある方を例にあげましょう。彼はネットワーク関連からハードウェア、最新の言語のコーディングから顧客折衝までそつなくできる人材であり、まさに万能型といってよい存在でした。派遣ではありましたが、常にプロジェクトの中心に存在して、彼がいなければ全然回らないような状態でした。取得している資格も多く、新しい技術をどんどん吸収するのが得意であり、彼自身もそれが苦でなく楽しんでいたようでした。お酒が入った場で、ちょっとしたきっかけから家計の話になり、彼の給与をおおざっぱに聞くことができました。「手取りで四捨五入して20万円かな」との彼の言葉に私は心から驚きました。経験やスキルはさることながら、年齢をあわせて考えてもその倍はもらっていてもおかしくないと私は思っていたからです。
冗談交じりに「他のところだったらもっと貰えるんじゃないですか」と私も言ったのですが、「転職とかいまさら面倒で、どうなるかわからないし」とのことでした。彼の言いたいこともわかります。確かに転職活動をしたり、現在の環境を変えるということは億劫なものです。実際に収入が増えたり、待遇の改善がされるかというのも100%ではありません。彼の経験やスキルであれば控えめにキャリアシートを書いてもそんなことはないとは思いますが、リスクや面倒がゼロではないので躊躇するのもわかります。ただ、彼の場合は傍目で見ているだけでも引く手あまたの人材であることは間違いありません。いろいろなことを差し引いたとしても、彼は転職をするべきだと思いました。少なくとも、いまの環境では彼の真価がちゃんと評価されることはずっとなさそうです。
それでは、なぜこんなギャップが生まれてくるのでしょうか。それは会社の給与体系、考え方であったり、単にタイミングの問題であったりと様々です。少なくとも本人の問題ではなく、環境を変えないとどうにもならないことです。たまに見られるおかしな現象としては、スキルの少ない人を現場から遠ざけたために、ポジション的には上に異動してそれがために収入が上がった、ということもあります。スキルや技術は自らの価値を高めるものであることは間違いありません。ただし、それがどの会社でも評価されるかは別問題なのです。彼には悪いですが、せっかくの宝の持ち腐れのようなSEにはなりたくないものです。
派遣で働き続けることに疑問を持ち始めたSEは、キャリアアップに役立つスキルを磨くのもおすすめです。ある程度の経験を積んで技術を身につけた中堅SEは、新人指導と育成を任せられることが増えてきます。また、目標達成に向けてチームメンバーを統率するチームマネジメントも中堅SEになると求められる機会が増えるでしょう。このような役割が期待される中堅SEは、マネジメントスキルを磨くことで成長を実感しやすくなり、評価も得やすくなります。
エンジニアが派遣で働き続けることは、収入の面で大きく損をしていると思います。派遣会社がサポートをしてくれるというメリットはありますが、そのサポートが必要なものであるか、自分には不要、あるいは少しでいいのか、ということがフリーランスになることで切り分けが可能です。どうしても面倒、あるいはできないことであれば、専用のサービスや外部に任せてしまえばいいのです。その費用を支払っても十分の収入が、フリーランスになることで得られるのです。
SEにとって資格というと、「転職に有利なツール」という印象が強いのではないでしょうか。もちろんその通りなのですが、資格取得にはもうひとつの利点があります。それが「資格手当」です。資格手当の基準は会社によって異なりますが、もし今勤めている会社に資格手当がなかったとしても、次の転職先では資格手当制度があるかもしれません。同じスキルを持っていても資格という目に見える形として取得しているか否かで、収入が変化するのですから、取得しておくに越したことはありません。